先日、渋谷区の松濤美術館で書道家・井上有一氏の作品を鑑賞いたしました。

 

私は初めて松濤美術館(しょうとうびじゅつかん)に足を運んだのですが、建物自体
とても素敵で空間丸ごと美術鑑賞できる雰囲気♪
紅味を帯びた韓国産の花崗岩(紅雲石)の外壁にブロンズ製のグリルと化粧垂木、
銅板葺きの屋根・・・建物中央の噴水部分は外部吹抜を展示室が円形に囲んでおり
隅々まで歩きたくなる建物でした(*´∀`*)

 

今回鑑賞させていただきました書道家・井上有一氏はアートとしての「書」を開拓した
現代書家で小学校の先生でもあった人物です。
「日常使っている文字を書くことで、誰でも芸術家になれる」
「書は世界に類を見ない芸術である」という有名な言葉を残しておられます( ̄∀ ̄)b

 

今回の展覧会は2会場に分かれており、作品をじっくり鑑賞する事ができました。

 

(※会場内は撮影NGだったのでフライヤーの写真で失礼いたします)
写真左は『 愚徹 』写真右は『 噫横川国民学校 』いう作品です。
『 愚徹 』は第4回サンパウロ・ビエンナーレに出品され大きく評価された作品です。
押し潰された文字の中に彼自身を投影したかのような作品だなぁと私は感じました。
『 噫横川国民学校 』は教員だった井上氏が体験した東京大空襲を題材とした書。
井上氏は数多の遺体の中から仮死状態発見されたそうです。
その体験が荒々しい筆跡で書き上げてられており、正面に立って鑑賞すると迫力を
感じると共に切ないような悲しいような気持になりました・・・(´・ω・`)

1971年に出版された『花の書帖』は井上氏がグラフィックデザイナーの福田繁雄氏と
コラボレーションした最初の作品です。
デザイナーの福田氏はユーモア感覚あふれるデザインで知られております。
表紙と裏表紙に花をかたどった風変わりなオブジェを配置。
更に、それぞれを木とビニールという異なった素材で制作するといった発想力。
遊び心溢れる彼の感性は他のアーティストには無い面白さがありました( *´艸`)

お写真はございませんが、井上氏の作品に「 凍墨(こおりずみ) 」と呼ばれる
技法で書かれたものが沢山あります。
筆の毛1本1本の通った痕跡がくっきりと浮かび上がったもので躍動感がありました。
この技法を用いるには冷やして膠(にかわ)を固めなければならず、主に11月以降の
冬にのみ制作をしていたそうです。

今回の展覧会を鑑賞して感じたことは「戦後」という時代がどのように移り変わり
現在に至っているのかを振り返るような感覚がありました。
そして書の新しい鑑賞の仕方や面白さを見出すことができました(*^ω^*)
興味があるお方は是非井上有一氏の作品を鑑賞されることをおススメいたします!

(20251006YK)